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夜中に足がつる…「こむら返り」の原因と、すぐできる対処・予防法

藤井内科医院 | 健康だより

夜中の「足がつる」こむら返り

原因・すぐできる対処・くり返さないための予防

夜中にふくらはぎがつって痛む高齢男性のイラスト

夜中に突然ふくらはぎが「ピキーン!」とつって、激しい痛みで飛び起きた——そんな経験はありませんか。こむら返り(筋けいれん)は、自分の意思とは関係なく筋肉が強く縮んでしまう、痛みを伴う数秒〜数分のけいれんです。ふくらはぎに最も多く起こりますが、足の裏や太もも、まれに手や腹部の筋肉に起こることもあります。

ありふれた症状で多くは心配のいらないものですが、くり返す場合や、背景に別の病気が隠れていることもあります。この記事では、起こるしくみから、その場でできる対処、漢方(芍薬甘草湯)の使い方と注意点、再発を防ぐ生活の工夫まで、わかりやすく整理しました。

なぜ足がつるの?

筋肉には、伸び縮みを感知する「センサー」が備わっています。筋肉の長さを感じる筋紡錘(きんぼうすい)と、腱の張りを感じるゴルジ腱器官です。ふだんは両者がバランスを取っていますが、このバランスが乱れて「縮めよ」という信号が過剰に出ると、筋肉が勝手に強く縮み続けてしまいます。これがこむら返りの正体と考えられています。

あとで述べる「つった時のストレッチ」が効くのは、筋肉を伸ばすことでゴルジ腱器官が刺激され、「縮めよ」の信号にブレーキ(抑制)をかけ直せるからです。

夜中・就寝中に多いのはなぜ?

日中の筋肉疲労や脱水がたまっている。
寝る姿勢ではつま先が下を向きやすく、ふくらはぎが縮んだまま固定されやすい。
横になると足の水分が体の上の方へ移動し、ふくらはぎが一時的に「脱水ぎみ」になりやすい。

どんな人・どんな時に起こりやすい?

はっきりした病気がなくても起こります(特発性)。次のような状況で起こりやすくなります。

加齢(50歳以上で増える)
妊娠後期
運動の最中・運動後、たくさん汗をかいたあと
夏場の脱水、エアコンによる足の冷え
立ちっぱなし・座りっぱなしで同じ姿勢が続いたとき

背景に病気が隠れていることも

くり返す・だんだんひどくなる場合は、次のような病気や薬が関係していることがあります。

腎臓・肝臓の病気、甲状腺機能の低下
血液中のミネラルの乱れ(マグネシウム・カルシウム・カリウムなどの不足)
神経の病気(末梢神経障害、神経の圧迫、まれに運動ニューロン疾患など)
一部のお薬(利尿薬、一部の吸入薬、スタチン、一部の降圧薬など)
人工透析を受けている方(とくに多めに除水したとき)
医師に相談し原因をチェックする様子
どのくらいの人が経験する?
50歳以上の方の約3〜5割が、くり返す足のつりを経験するといわれます。そのうち4割ほどは週に3回以上、約6%は毎晩のように起こるという報告も。「自分だけ」ではなく、とても身近な症状です。

つってしまった時の対処法

最も効果的なのは「ストレッチ(筋肉を伸ばす)」です。あわてず、次の順番で。

1
ふくらはぎがつったら、ひざを伸ばしたまま、つま先を手で持って体の方へゆっくり引き寄せる(アキレス腱を伸ばすイメージ)。
2
手が届かないときは、壁に向かって立ち、つま先を壁につけてかかとを床に下ろし、ふくらはぎを伸ばす。
3
痛みがやわらいできたら、つった部分をやさしくマッサージして血流をうながす。
4
落ち着いたら、蒸しタオルや入浴で温めると、ぶり返しを防ぎやすい。

受け身で伸ばすだけでも、多くは数秒〜数十秒で痛みが引いていきます。無理に逆方向へ力を入れないことがポイントです。

ふくらはぎを伸ばすストレッチの実演
ふくらはぎを伸ばしましょう

漢方「芍薬甘草湯」について

日本でこむら返りに最もよく使われるお薬が、漢方の芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)です。芍薬と甘草の2種類の生薬からなり、つった時に頓服で使うと、およそ5〜数分という速さで効くのが特徴です。漢方というと「ゆっくり効く」イメージですが、これは急なけいれんと痛みをすばやくしずめる“即効型”。骨格筋だけでなく、胃腸などの平滑筋のけいれんにもはたらきます。

使い方の目安

「つりそうな時・つった時」に1回分を頓用するのが基本。夜つりやすい方は就寝前に1回のむ使い方も。
毎日漫然と飲み続ける薬ではありません。回数が増えたら背景の見直しや別の予防策を検討します。
⚠ 大切な注意 — 甘草による副作用

甘草を比較的多く含むため、長く・たくさん使うと「偽(ぎ)アルドステロン症」が起こることがあります。主な症状は、手足や顔のむくみ、体重増加、血圧の上昇、だるさ・力が入りにくい、など(血液中のカリウム低下も)。

とくに利尿薬を使っている方・複数の漢方を併用している方・高齢の方は注意が必要です。続けて使う場合は定期的な血液検査が望ましく、症状が出たら中止してご相談ください。「漢方だから副作用がない」わけではありません。

効かない・くり返す時は

有効性は高い薬ですが、すべての方・すべてのつりに効くわけではありません。効きが悪い・頻繁にくり返す場合は、別の漢方が合うこともあり、背景のミネラル異常や他の病気がないかを調べることが大切です。自己判断で量を増やさず、一度ご相談ください。

くり返さないための予防

薬に頼りきりにせず、毎日の工夫で「つりにくい体」をつくることが、いちばんの近道です。

毎日の習慣でつりにくい体づくりを
寝る前とお風呂上がりのストレッチふくらはぎ・太もも裏を、入浴後や就寝前にゆっくり。反動をつけず20〜30秒かけてじんわり伸ばすのがコツ。
水分とミネラルを補う就寝前にコップ1杯の水を。食事ではマグネシウム(海藻・そば・ごま・ナッツ・大豆)、カルシウム(乳製品・小魚・大豆製品)、カリウム(野菜・果物・いも類)をバランスよく。
体を冷やさない冷えは筋肉を縮こまらせます。夏でも素足で寝ない、薄手の長ズボンやレッグウォーマー、湯船で温まる。
適度な運動と同じ姿勢を避ける軽い運動で血流と筋力を保ち、長時間の立ちっぱなし・座りっぱなしの合間に屈伸やかかと上げを。
サプリ・市販薬について
マグネシウム:不足はつりの原因になりますが、サプリ補充が夜のつりに効くかは研究で一貫していません。とくに便秘薬としても使う酸化マグネシウム製剤は予防効果が示されていません。
ビタミンK2:近年の研究で、夜間のこむら返りの回数・強さ・持続時間を減らす可能性が報告され注目されています。
キニーネ:以前は使われましたが、重い副作用のため米国では筋けいれんへの使用が禁止。自己判断での使用は避けてください。

こんな時は受診を

ただのつり、と思っていても、次のような場合は一度受診してください。

最近になって急に始まり、痛みが続く・くり返す
週に何度も、あるいは毎晩のように起こる
足のしびれ・力の入りにくさ・筋肉のやせを伴う
むくみ・体重増加・だるさを伴う(薬の副作用やミネラル異常のことも)
腎臓・肝臓・甲状腺の病気、糖尿病・透析などをお持ちの方

必要に応じて腎機能・肝機能・甲状腺・血中ミネラルなどを調べ、神経の病気が疑われればさらに検査を検討します。原因に応じた対応で、つりにくくしていけます。

まとめ

こむら返りは、神経と筋肉の調節の乱れで起こる身近な症状。
つった時はあわてず、ふくらはぎをゆっくり伸ばす(ストレッチ)のが最も効果的。
漢方の芍薬甘草湯は即効性があるが、甘草の副作用に注意し長期連用は避ける。
予防の基本は、ストレッチ習慣・水分とミネラル・冷え対策・適度な運動。
くり返す・しびれや脱力を伴う場合は、背景の病気を調べるため受診を。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。お薬の使用や症状については、自己判断せず医師・薬剤師にご相談ください。

藤井内科医院静岡県浜松市 | 内科・小児科・循環器内科