夏は血圧が下がる?
── 夏の血圧と上手につきあうために ──
暑い季節になると、「最近、血圧がいつもより低めに出るな」と感じる方がいらっしゃいます。実はこれ、気のせいではありません。血圧には季節のリズムがあり、夏は下がりやすく、冬は上がりやすいことが、世界中の研究で確かめられています。
ただ、「夏は血圧が下がるから安心」と単純に考えてしまうと、思わぬ落とし穴があります。今回は、夏の血圧の特徴と、ご家庭で気をつけていただきたいポイントをまとめました。
夏に血圧が下がるのは、どのくらい?
たくさんの研究をまとめた報告では、夏と冬を比べると、ご家庭で測る血圧は上(収縮期)が約6mmHg、下(拡張期)が約3mmHgほど、夏のほうが低くなるとされています。気温が5度上がるごとに、上の血圧が約1.4mmHg下がるという報告もあります。
この変化は、もともと血圧のお薬を飲んでいる方や、ご高齢の方ほど大きく出やすい傾向があります。
どうして夏は下がるの?
主な理由は3つです。
- 血管が広がる:暑いと体は熱を逃がそうとして、皮膚の血管を広げます。血管が広がると血圧は下がります。
- 汗で水分が減る:たくさん汗をかくと体の水分が減り、血液の量も少し減るため、血圧が下がりやすくなります。
- 塩分・水分のバランスが変わる:汗と一緒に塩分も失われ、血圧に影響します。
「下がりすぎ」のサインに気をつけて
夏の血圧低下で気をつけたいのは、下がりすぎです。とくにお薬を飲んでいる方では、次のような症状が出ることがあります。
- 立ち上がったときの、めまい・ふらつき・立ちくらみ
- なんとなく体がだるい、力が入らない
- ひどいときには、気を失ってしまう(失神)
実際に、暑い地域の研究では、血圧のお薬を飲んでいる方の失神が、冬に比べて夏に増えたという報告もあります。「夏になってから、ふらつくようになった」というときは、夏の血圧低下が隠れていることがあります。
夏の意外な落とし穴 ──「夜の血圧」はむしろ上がることも
ここが、夏の血圧のちょっと難しいところです。
昼間の血圧は暑いと下がりやすいのですが、夜、眠っている間の血圧は、暑い日ほど逆に上がることがあります。寝苦しさや、睡眠の質の低下が関係していると考えられています。
昼間や診察室では血圧が正常なのに、夜だけこっそり高くなっている状態を「仮面(かめん)夜間高血圧」と呼びます。これは夏に増えやすいことが知られています。昼の数字だけを見て「夏は大丈夫」と安心できない理由が、ここにあります。
いちばん大切なこと ── お薬を自己判断でやめない
- 急に中断すると、血圧が跳ね上がってしまうことがあります
- 昼は下がっていても、夜は高いままのことがあります(前にお話しした仮面夜間高血圧)
お薬を調整する必要があるかどうかは、診察室の血圧だけでなく、ご家庭での血圧や症状を合わせて、主治医が判断します。 「夏は下がっているみたいだ」と感じたら、まずは測って、その記録を持ってご相談ください。
ご家庭でできること
① 家庭血圧を測って記録する
夏の血圧の変化は、ご家庭での測定がいちばんよくわかります。
- 朝:起きて1時間以内、トイレのあと、朝ごはん・お薬の前に、1〜2分座ってから測ります
- 晩:寝る前に、同じように座って測ります
- 1回ごとの数字に一喜一憂せず、平均を見ることが大切です
記録を診察にお持ちいただくと、お薬の調整の大きな手がかりになります。
② 水分と塩分を上手にとる
汗をかく季節は、こまめな水分補給が大切です。ただし、心臓や腎臓の病気で水分を控えるよう言われている方は、主治医の指示を優先してください。
③ お部屋の暑さ対策
エアコンを上手に使い、室温を整えることは、血圧の安定にも熱中症予防にも役立ちます。とくに夜は、寝室の環境を整えることが、夜間の血圧にも良い影響を与えます。
こんなときは、早めにご相談ください
- 立ちくらみ・めまい・ふらつきが続く
- ご家庭での血圧の上が 110を下回る日が続く、または逆に高い日が続く
- 一度でも気を失ったことがある
- 急な体重の増加や、強いむくみがある
まとめ
- 夏は血圧が下がりやすい季節です
- でも「下がりすぎ」や、夜だけ上がる「仮面夜間高血圧」に注意が必要です
- 自己判断でお薬をやめず、まず測って、記録を持ってご相談を
参考:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」/欧州高血圧学会 血圧の季節変動に関するコンセンサスステートメント(J Hypertens. 2020)/Narita K, et al. Hypertens Res. 2021 ほか
