· 

帯状疱疹とワクチン ―「80歳までに3人に1人」、2025年から定期接種が始まりました

帯状疱疹(たいじょうほうしん)とワクチン

〜「80歳までに3人に1人」の身近な病気を、防ぎましょう〜

「体の片側がピリピリ痛む」「そのうち赤いブツブツと水ぶくれが出てきた」——それは帯状疱疹かもしれません。子どものころにかかった水ぼうそう(水痘)のウイルスが、何十年もたってから再び目を覚まして起こる病気です。

けっして珍しい病気ではありません。日本では80歳までに約3人に1人がかかるといわれています。そして2025年(令和7年)4月からは、予防のためのワクチンが定期接種の仲間入りをしました。今回は、この身近な病気とその備えについて、やさしくご説明します。

帯状疱疹は誰にでも起こりうる身近な病気です

そもそも、帯状疱疹ってどんな病気?

水ぼうそうが治ったあとも、原因となるウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)は消えてなくなるわけではありません。背骨の近くにある神経のなかにひっそりと潜んで、静かに眠り続けています。

ところが、加齢や疲れ、ストレス、病気などで免疫(体の防御力)が下がると、眠っていたウイルスが再び暴れ出します。ウイルスは神経を伝って皮膚に出てくるため、神経の走行にそって、体の片側に帯(おび)のように症状が出るのが特徴です。これが「帯状疱疹」という名前の由来です。

日本ではどれくらい多いの?

宮崎県で20年以上にわたって行われた大規模な調査(宮崎スタディ)から、日本人の帯状疱疹について次のようなことがわかっています。

80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を経験します
50歳代から急に増えはじめ、年齢が上がるほど多くなります
女性にやや多い傾向があります
一度かかった人でも、約6%の方が再発を経験します
夏(暑い時期)に増える季節のかたよりがあります
近年は患者数が増加傾向で、20〜40代の若い世代でもみられます
ひとくちメモ:「若い自分には関係ない」と思われがちですが、大人の9割以上はすでに体の中にこのウイルスを持っています。過労や強いストレスがきっかけで、若い方が発症することも珍しくありません。

どんな症状が出るの?

① まず「痛み」から始まることが多い

発疹が出る1〜5日ほど前から、ピリピリ・チクチクする痛みやかゆみ、違和感が先に出ることがよくあります。この段階では発疹がないため、肩こりや筋肉痛、内臓の病気とまちがえられることもあります。

② 赤い発疹と水ぶくれが「片側」に帯状に

続いて、体の左右どちらか一方に赤い発疹が帯のように並んで出てきます。やがて水ぶくれになり、かさぶたになって、通常は3〜4週間ほどで治ります。胸やおなか、顔などに出やすいのが特徴です。

帯状疱疹の症状:片側に帯状の発疹

いちばん気をつけたいのは「あとに残る痛み」

帯状疱疹でもっとも多く、そしてつらい後遺症が、帯状疱疹後神経痛(PHN)です。皮膚がきれいに治ったあとも、焼けるような・締めつけられるような痛みが数か月〜数年続くことがあります。

50歳以上では、帯状疱疹にかかった方の約5人に1人にみられます
夜も眠れない、服が触れるだけで痛いなど、生活の質を大きく下げてしまいます
いったん残ると治療がむずかしく、完全に痛みを取りきれないこともあります
こんな場所に出たら、すぐ受診を
顔・目のまわりの帯状疱疹は特に注意が必要です。目に症状が及ぶと、角膜炎やぶどう膜炎を起こし、視力の低下につながることがあります。鼻の先に発疹が出たときも、目の合併症のサインとされます。おかしいなと思ったら、早めに眼科・当院にご相談ください。

治療 ―「早めのスタート」がカギ

帯状疱疹とわかったら、ウイルスの増殖をおさえる抗ウイルス薬を飲みます。ポイントは、発疹が出てから72時間(3日)以内に治療を始めること。早く始めるほど、症状が軽くすみ、後神経痛(PHN)を残しにくくなります。

近年は日本でも、1日1回の内服ですむ新しいお薬など、選択肢が増えています。痛みが強いときは痛み止めも併用します。「たかが皮膚の病気」と我慢せず、早めに受診してください。

発症から72時間以内の治療開始が目安です

予防できます ― 帯状疱疹ワクチンのはなし

帯状疱疹は、ワクチンで予防できる病気です。発症そのものを減らすだけでなく、つらい後神経痛(PHN)の予防にも効果があります。

ワクチンで帯状疱疹を予防しましょう
2025年4月から「定期接種」になりました。
これまで任意(自費)だった帯状疱疹ワクチンが、2025年(令和7年)4月から、国の定期接種の仲間入りをしました。対象の方は、費用の助成を受けて接種できます。

ワクチンは2種類。選べます

日本では、次の2つのワクチンから選べます。それぞれに特徴があります。

生ワクチン 組換えワクチン
おもな商品名 ビケン シングリックス
種類 弱毒生ワクチン 組換え(不活化)ワクチン
接種回数・方法 1回
(皮下注射)
2回
(2か月あけて筋肉注射)
予防効果 約5〜6割
(年数とともに低下)
9割以上
(10年後も約7割)
接種後の反応 比較的軽い 痛み・だるさ
などがやや強め
免疫が下がっている方 接種できません 接種できます
費用の目安 安い やや高い
(2回で計約4万円※)

※費用は医療機関や助成の有無で変わります。組換えワクチン(シングリックス)は効果が高く長もちしますが、その分やや高価です。どちらが向いているかは、年齢や持病、免疫の状態によって変わりますので、お気軽にご相談ください。

※2種類を混ぜて接種すること(交互接種)はできません。組換えワクチンは必ず2回とも接種しましょう。

だれが定期接種の対象?(浜松市の場合)

2025年度の定期接種の対象になるのは、おもに次の方です。

その年度に65歳になる方
経過措置(2025〜2029年度)として、その年度に70・75・80・85・90・95・100歳になる方
60〜64歳で、HIVによる重い免疫の障害がある方
浜松市にお住まいの方へ
浜松市では、上記の定期接種のほかに、50歳以上の方の任意接種にも費用助成があります(1回あたり3,500円の助成)。
対象や自己負担額は年度によって変わることがあります。最新の金額・対象・手続きは、浜松市のホームページ、または当院でご確認ください。

こんな方は、特に予防をおすすめします

次のような方は帯状疱疹にかかりやすく、重くなりやすいことがわかっています。

50歳以上の方
糖尿病・慢性腎臓病・COPD(肺の病気)・ぜんそくなどの持病がある方
関節リウマチや膠原病などで、免疫をおさえる治療を受けている方
強いストレスや疲れをかかえている方

免疫をおさえる治療を予定している方は、できれば治療を始める前に接種を。この場合は組換えワクチン(シングリックス)が適しています。タイミングについては主治医とご相談ください。

さいごに ― 当院より

帯状疱疹は、年齢を重ねればだれにでも起こりうる、とても身近な病気です。しかし、早めの治療でつらい後遺症を減らすことができ、ワクチンで予防することもできる病気でもあります。

「これって帯状疱疹かな?」と思ったら、我慢せずにお早めにご相談ください。ワクチンについてのご質問(どちらを選べばよいか、費用や助成のことなど)も、どうぞお気軽に当院までお尋ねください。

藤井内科医院
※この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。症状や治療・接種の判断は、必ず診察のうえで個別に行います。