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夏の食中毒に気をつけましょう ── 原因・症状・受診の目安とご家庭でできる予防

夏の食中毒に気をつけましょう

〜細菌性食中毒とアニサキス、ご家庭でできる予防のポイント〜

気温と湿度が高くなる夏は、食べ物に付いた細菌が急激に増えやすく、一年のなかでも「細菌による食中毒」が最も多い季節です。「新鮮なものを食べたのにお腹をこわした」「家族で同じものを食べたら次々に具合が悪くなった」——夏場はこうしたご相談が当院でも増えます。

この記事では、夏に多い食中毒の原因と症状、ご家庭でできる対処法と予防のコツを、最新の国内データをもとにわかりやすくお伝えします。

夏は家族みんなが食中毒に注意したい季節です
夏は家族みんなが食中毒に注意したい季節です

1 夏は「細菌」、冬は「ウイルス」が主役です

食中毒は一年を通じて起こりますが、原因となる病原体は季節によって大きく変わります。細菌は高温・多湿を好むため、細菌性食中毒は夏(特に8月)に多く発生します。一方、ノロウイルスなどのウイルス性は空気が乾燥して冷える冬(1月ごろ)にピークを迎えます。

厚生労働省の食中毒統計によると、2024年(令和6年)の食中毒は全国で1,037件・患者数14,229人が報告されました。件数が多い原因は、アニサキス(330件)・ノロウイルス(276件)・カンピロバクター(208件)の順で、この3つで全体の約8割を占めます。このうち夏に増えるのが、カンピロバクター・腸炎ビブリオ・サルモネラなどの細菌と、寄生虫のアニサキスです。

2 夏に注意したい主な原因

■ カンピロバクター ── 生や半生の鶏肉に注意

近年、件数が最も多い細菌性食中毒のひとつです。おもな原因は、鶏の刺身・鶏レバ刺し・タタキ・湯引きなど、生または加熱が不十分な鶏肉です。ごく少量の菌でも発症し、「新鮮だから安全」という考えは通用しません。

  • 潜伏期間は1〜7日(平均2〜3日)と、ほかの食中毒より長めです。数日前の食事が原因のこともあります。
  • 下痢・腹痛・発熱・吐き気などが主な症状で、多くは1週間ほどで回復します。
  • まれに、回復後1〜3週間して手足のしびれや力の入りにくさが出るギラン・バレー症候群を起こすことがあり、注意が必要です。
生や半生の鶏肉は避け、中心までしっかり加熱を
生や半生の鶏肉は避け、中心までしっかり加熱を

■ 腸炎ビブリオ ── 生の魚介類と「夏の海水温」

海水中にいる細菌で、海水温が15℃を超える夏に急増し、刺身や寿司など生の魚介類を通じて食中毒を起こします。刺身好きの多い日本では、昔から夏に多い食中毒の代表格です。

  • 潜伏期間は8〜24時間(早いと2〜3時間)。激しい腹痛と水のような下痢が特徴です。
  • 真水(水道水)と熱に弱いのが弱点で、4℃以下ではほとんど増えません。この性質が、あとで述べる予防のカギになります。
  • 高齢の方や肝臓の病気など基礎疾患のある方は、まれに重症化することがあります。

■ サルモネラ・腸管出血性大腸菌(O157など)

  • サルモネラ:加熱不十分な鶏肉や卵が主な原因。乾燥に強いのが特徴です。
  • 腸管出血性大腸菌(O157・O111など):少量でも発症し、毒素(ベロ毒素)によって血便や、まれに重い合併症(溶血性尿毒症症候群)を起こすことがあります。加熱不十分な肉、井戸水などが原因になります。

■ アニサキス ── 件数では毎年トップの寄生虫

サバ・アジ・サンマ・イカなどの魚介類に寄生する線虫です。生きたまま食べると、数時間後に激しい胃の痛みや吐き気を起こします。細菌ではないため夏だけの問題ではありませんが、報告件数では毎年最多で、生魚を食べる機会が増える時期はとくに注意が必要です。

刺身やしめさばはアニサキス対策(加熱・冷凍)を忘れずに
刺身やしめさばはアニサキス対策(加熱・冷凍)を忘れずに

覚えておきたいアニサキス対策

加熱:中心温度60℃で1分以上(しっかり火を通せば死滅します)

冷凍:−20℃で24時間以上

わさび・酢・塩では死にません。「しめさば」も冷凍していなければ安全とは言えません

目視で取り除く/新鮮なうちに内臓を除く(鮮度が落ちると身に移動します)

3 細菌性とウイルス性、症状はどう違う?

夏に多い細菌性と、冬に多いウイルス性では、症状の出方に傾向の違いがあります。ただし症状だけで原因を正確に見分けるのは難しいため、あくまで目安としてご覧ください。

細菌性(夏に多い) ウイルス性(冬に多い)
主な症状 腹痛・下痢が強い、発熱しやすい 吐き気・嘔吐が中心
便の性状 血便を伴うことがある 水のような下痢(血便はまれ)
発熱 高くなりやすい 軽いか、なしのことが多い
経過 菌により長引くことがある 多くは1〜3日で自然に軽快
治療 重症例では抗菌薬を使うことも 水分補給などの対症療法が中心

4 こんな症状は早めに受診を

多くの食中毒は水分をとって安静にしていれば数日で回復しますが、次のような場合は自己判断せず、早めに医療機関を受診してください。

受診をおすすめするサイン:血便/38℃以上の高熱・激しい腹痛/脱水(水分がとれない・尿が少ない・ぐったり)/下痢・嘔吐が2〜3日続く/小児・高齢者・持病・妊娠中で症状が強い。ひとつでも当てはまれば早めに受診を。

5 ご家庭での対処法

まずはこまめな手洗いと水分補給から
まずはこまめな手洗いと水分補給から
  • こまめな水分・塩分補給を最優先に。経口補水液(OS-1など)やスポーツドリンクが適しています。一度にたくさんではなく、少量を何回にも分けて飲みましょう。
  • 自己判断で市販の下痢止め(強く止めるタイプ)を使わないでください。特に血便や高熱があるときは、原因菌や毒素を体内にとどめてしまい、かえって悪化させることがあります。
  • 消化のよいもの(おかゆ、うどん、スープなど)から少しずつ再開します。
  • 症状が強いとき・不安なときは、無理に食べず、早めにご相談ください。

6 予防の3原則 ──「つけない・増やさない・やっつける」

夏の食中毒の多くは、ご家庭のちょっとした工夫で防げます。食中毒予防の基本となる3つの原則を、具体的な行動とあわせて押さえておきましょう。

① つけない(清潔・二次汚染を防ぐ)

調理前・生の肉や魚を触ったあと・トイレのあとは、石けんでしっかり手を洗う

生肉・生魚を切ったまな板や包丁は、洗って熱湯や消毒をしてから野菜などに使う(または使い分ける)

腸炎ビブリオ対策として、魚介類は調理前に流水(水道水)でよく洗う

② 増やさない(低温管理・早めに食べる)

買い物は保冷剤・保冷バッグを活用し、帰宅後すぐ冷蔵・冷凍へ

冷蔵庫は詰め込みすぎない(10℃以下、冷凍は−15℃以下が目安)

調理後は室温で長く放置せず、早めに食べる。作り置きは速やかに冷ます

③ やっつける(しっかり加熱)

肉・魚は中心部までしっかり加熱(中心温度75℃で1分以上が目安)

鶏肉の生食・半生(鶏刺し・レバ刺し・タタキ)はできるだけ避ける

アニサキスは加熱(60℃1分以上)または冷凍(−20℃24時間以上)で死滅する

7 まとめ

夏は細菌性の食中毒が増える季節です。「生や半生の鶏肉を避ける」「魚介類は流水で洗って低温で管理」「しっかり加熱」「こまめな手洗い」——この基本を意識するだけで、多くの食中毒は防げます。

下痢や嘔吐が続くときは、まず水分補給を。血便・高熱・強い腹痛・脱水のサインがあれば、早めにご相談ください。お子さんやご高齢の方、持病のある方はとくに注意しましょう。ご不安なことがあれば、当院までお気軽にお問い合わせください。

藤井内科医院

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。症状が気になる場合は医療機関にご相談ください。