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蜂に刺されたときの対処法 ― 見逃してはいけない"全身症状"

蜂に刺されたときの対処法 ― 見逃してはいけない“全身症状”

庭仕事中は、蜂に気づいたら振り払わず静かに離れましょう
庭仕事中は、蜂に気づいたら振り払わず静かに離れましょう

暑くなると増える蜂刺され

7月から秋にかけては、蜂の活動が最も活発になる季節です。庭の手入れや農作業、屋外レジャーの最中に刺されて来院される方が、当院でもこの時期に増えてきます。多くは局所の腫れで済みますが、まれに命に関わる反応(アナフィラキシー)を起こすことがあります。

実際、日本では蜂刺されによって年間およそ20人が亡くなっており、その多くはアナフィラキシーショックが原因です。近年11年間(2008〜2018年)では191人(年平均17人強)にのぼり、これはクマによる死者を上回ります。正しい知識を持っておくことが、いざというときの備えになります。

日本で刺す主な蜂

刺す蜂は大きく3種類です。

スズメバチは最も攻撃性が強く毒量も多く、巣に近づくと集団で襲ってきます。アシナガバチは比較的おとなしいものの、洗濯物や軒下の巣に触れて刺されることがあります。ミツバチは毒針に逆棘(さかとげ)があるため、一度刺すと針が皮膚に残るのが特徴です。

日本で刺す主な3種類の蜂
日本で刺す主な3種類の蜂

意外に思われるかもしれませんが、日本で蜂アレルギーの原因として最も多いのはアシナガバチで、次いでスズメバチ、ミツバチの順です。ただし死亡に至るケースの大半はスズメバチによるもので、「刺される数」と「危険度」は別ものと考えてください。

刺されたあとに起こる3つの反応

①局所反応 刺された場所の痛み・腫れ・赤み・かゆみ。数時間〜2、3日で治まります。多くはこのタイプです。

②大きな局所反応 直径10cm以上に腫れ、48〜72時間でピークを迎え、最大10日ほど続くことがあります。見た目は派手で蜂窩織炎(ほうかしきえん)と間違われることもありますが、命に関わることは通常ありません。

③アナフィラキシー(全身反応) 刺された場所以外にも症状が広がるもので、命に関わります。刺されてから数分〜30分以内に起こることが多く、発症までの時間が短いほど重症とされます。

すぐに救急車を呼ぶべきサイン

刺された場所から離れた場所にも次の症状が出たら、迷わず119番してください。

  • 全身のじんましん・かゆみ
  • 息苦しさ、のどの詰まる感じ、声のかすれ
  • めまい、気が遠くなる、意識がもうろうとする
  • 唇や顔のむくみ、吐き気・嘔吐、お腹の痛み
これらの全身症状が出たら、迷わず119番を
これらの全身症状が出たら、迷わず119番を

その場でできる応急処置

まずは蜂を刺激せず、姿勢を低くしてゆっくり巣から離れます(振り払うと集団攻撃を誘発します)。

ミツバチに刺されたときは、皮膚に残った針をできるだけ早く取り除きましょう。かつては「爪やカードで“こすり取る”べきで、つまんではいけない」と言われてきましたが、1996年に医学誌ランセットに報告された研究で、除去の方法(こすり取る/つまむ)による差はなく、大切なのは“いかに速く抜くか”であることが示されました。針は抜けた後も1分ほど毒を注入し続けるため、数秒の差が腫れの大きさを左右します。方法は問わないので、とにかく素早く取り除いてください。

その後、傷口を流水で洗い、冷やすと痛みと腫れが和らぎます。市販の抗ヒスタミン軟膏やステロイド軟膏も有効です。毒を口で吸い出すのは避けてください(感染のリスクがあり、効果も乏しいためです)。

「2回目が危ない」って本当?

これは半分本当で、少し補足が必要です。アナフィラキシーは体が一度蜂毒を“記憶”(感作)してから起こる反応なので、仕組み上、初めての一刺しでいきなり起こることは基本的にありません。その意味で「2回目以降」は正しいのですが、必ず2回目とは限らず、何度も無事だった方が突然反応することもあります。

一方で、「以前ひどく腫れたから、次は危ない」とは限らない点が重要です。大きく腫れた(大きな局所反応)経験がある方が次に全身反応を起こす確率は5〜10%程度と、意外に低いことが分かっています。本当に注意が必要なのは、過去に全身症状(じんましんの広がり・息苦しさ・血圧低下など)を起こしたことがある方で、その場合の再発リスクは、軽症で10〜15%、重症だった成人では最大70%にもなります。腫れの大きさより、「全身症状が出たかどうか」がリスクの分かれ目です。

予防のポイント

蜂は黒い色と香りに寄ってきます。屋外作業では明るい色の服・長袖長ズボンを選び、香水や整髪料は控えめに。庭や軒下に巣を見つけたら、自分で駆除せず自治体や専門業者へご相談ください。草刈り作業などで巣を刺激したことが刺傷事故の最大の原因で、被害は特に巣が大型化する夏から秋に集中します。

屋外作業は明るい色の服で肌の露出を減らして
屋外作業は明るい色の服で肌の露出を減らして

過去に全身反応が出た方へ

以前アナフィラキシーを起こしたことがある方には、いざというときのための自己注射薬(エピペン®)の処方を検討します。また、ハチ毒アレルギーに対する減感作療法(アレルゲン免疫療法)は再発リスクを大きく下げる有効な治療(有効率85〜98%)として確立しています。心当たりのある方は当院にご相談ください。

藤井内科医院
内科・小児科・循環器内科