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熱中症を正しく知る ― 見分け方・応急処置・予防の完全ガイド

熱中症を正しく知る 症状・応急処置から予防・警戒アラートまで

藤井内科医院ブログ(内科・小児科・循環器内科)/2026年7月

この記事のポイント

・熱中症は屋外だけでなく室内でも起こる。救急搬送の発生場所は「住居」が最も多い。

・様子見か救急かの分かれ目は「呼びかけへの受け答えがはっきりしているか」

・疑ったらまず冷やす。冷却は病院へ運ぶことより優先。

・予防の柱はエアコンと水分。暑さ指数と警戒アラートを活用。

浜松のあたりは全国でも指折りの暑さで知られ、2020年8月には市内で41.1℃を観測し、当時の国内最高記録に並んだこともありました。夏になると体調をくずして当院を受診される方も少なくありません。この記事では、熱中症の症状の見分け方と応急処置、そして日々の予防までを一つにまとめました。

1.熱中症とは — 「熱の逃がし方」が破綻する病気

私たちの体は、暑さや運動で体温が上がると、汗をかいたり皮膚から熱を逃がしたりして体温を保っています。高温多湿や激しい運動が続くとこの調節が働かなくなり、体に熱がこもります。これが熱中症です。

覚えておきたい事実 熱中症の救急搬送で、発生場所の第1位は「住居」。エアコンを使わず室内で過ごした高齢の方の発症が多くみられます。

2.症状の重さは4段階 — 決め手は「意識」

日本救急医学会の診療指針(2024年)では、症状の重さをⅠ度からⅣ度に整理しています。ご家庭では、次の大まかな見分け方で十分です。

重さ 主な症状 どうする
Ⅰ度 めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の汗、こむら返り(意識ははっきり) 涼しい場所で冷却・水分。改善しなければ受診
Ⅱ度 頭痛、吐き気・嘔吐、体のだるさ、ぼんやりする 自分で水分がとれないなら医療機関へ
Ⅲ・Ⅳ度 呼びかけへの反応がおかしい、まっすぐ歩けない、けいれん/肝臓・腎臓の障害など ためらわず救急車(119)

見分けの決め手 「声をかけて受け答えがはっきりしているか」。受け答えがおかしい・意識がもうろうとしているときは、迷わず救急車を。

3.熱中症を疑ったら — 迷ったら冷やす

2024年の診療指針では「冷やすことは、病院へ運ぶことより優先する」とされています。救急車を待つあいだも、その場で体を冷やすことが回復を左右します。

① 涼しい場所へ

エアコンの効いた室内や風通しのよい日陰へ移す

② 体を冷やす

首の横・脇の下・足の付け根を保冷剤などで冷やす

③ 水分・塩分

意識があり自分で飲めれば経口補水液を少しずつ

首の横・脇の下・足の付け根は太い血管が皮膚のすぐ近くを通り、効率よく全身の熱を下げられます。

こんなときは、すぐに119番

呼びかけへの反応がおかしい/自分で水分を飲めないときは、無理に飲ませないでください(誤って気管に入る危険)。すぐ救急車を呼びます。

ちょっと補足

額に貼る冷却シート(冷えピタなど)は、ひんやりして気持ちはよいものの、体温を下げる効果は限定的です。応急処置の主役にはなりません。

4.予防の基本は4つ

① エアコンを我慢しない

夏はエアコンが命を守る道具。高齢の方は暑さを感じにくいので温度計を見て早めに。夜間・就寝中も。

② こまめに水分・塩分

のどが渇く前に少しずつ。日常は水や麦茶で1日1.2リットルほどを目安に。

③ 暑さに体を慣らす

急に暑くなる時期は要注意。少し汗ばむ運動を10日〜2週間続けると暑さに強くなる(暑熱順化)。

④ 軽装で日ざしを避ける

通気性のよい服を選び、帽子や日傘を活用しましょう。

ちょっと補足

「飲む点滴」こと経口補水液は、大量に汗をかいたときや脱水時には有効ですが、普段から水代わりに飲むものではありません。塩分が多く、常用は塩分のとりすぎに。ふだんは水やお茶で。

5.暑さ指数(WBGT)と警戒アラートを味方に

気温だけでなく湿度や日ざしまで含めた暑さの危険度が「暑さ指数(WBGT)」です。同じ気温でも湿度が高いと汗が蒸発せず熱がこもります。この指数をもとに、環境省と気象庁が2種類のアラートを出しています。

熱中症警戒アラート 熱中症特別警戒アラート
どんな時 危険な暑さが予想される日(暑さ指数33以上) 過去に例のない広域的な猛暑(全地点で暑さ指数35以上)
とる行動 涼しい環境で過ごす/運動・外出は控えめに/こまめに水分 予防を徹底/外出・イベント中止も検討/冷房施設(クーリングシェルター)を開放

2026年度のアラート運用期間は4月下旬〜10月下旬です。環境省のサイトやLINE、メール配信で、お住まいの地域の情報を無料で受け取れます。

6.特に気をつけたい方 — ご家族の見守りを

熱中症で救急搬送される方の半数以上は高齢者です。次に当てはまる方は、周りの見守り・声かけが大きな予防になります。

見守りたい人・声をかけたい人

高齢の方(暑さやのどの渇きを感じにくく、汗をかく力も落ちています)

小さなお子さん(体温調節が未熟で、大人より地面に近く高温にさらされやすい)

心臓・腎臓の病気、糖尿病などの持病がある方

血圧や利尿のお薬など、脱水を起こしやすいお薬を飲んでいる方

ご本人まかせにせず、「エアコンつけてる?」「お茶飲んだ?」と声をかけ合うことが、いちばんの予防です。持病やお薬で不安があれば、夏の水分のとり方をかかりつけ医にご相談ください。

受診の目安と、当院でできること

受診の目安 「水分がとれない」「症状がよくならない」「意識がはっきりしない」のいずれかがあれば医療機関へ。意識障害があれば迷わず救急車を。

当院では 脱水に対する点滴や全身状態の評価など、熱中症への対応を行っています。気になる症状があるときはご相談ください。暑い夏を、どうか元気に乗り切ってください。